実は流行は2年前から決まっている
ファッション雑誌でもよく「この秋の流行はマスタードイエロー」などと見かけますよね。^^
トレンドカラー、または流行色と言います。
これらのトレンドは、一体誰が決めているのでしょうか。
発信地はフランス?ハリウッドセレブ?ファッションショー?
みんなが身に着けているからトレンドだと思いがちですが、実はトレンドカラーというものはきちんとした話し合いで決められています。
そのトレンドカラー、なんとその2年間も前から決められているのをご存知ですか?
その唯一の「国際的な」機関が存在していて、それが「インターカラー(国際流行色委員会)」という組織です。
正式名称はInternational Commission for Fashion and Textile Colors。
16ヶ国の代表機関が加盟していて(2017年9月現在)、日本も加盟国に含まれます。
日本からはファッションやインテリア、家電、自動車などの各社が加盟する「JAFCA(社団法人 日本流行色協会)」が参加しています。
インターカラーが選定する色は「インターカラー パレット」と言って、二年前に決定されます。
パリで開かれる選定会議で16ヶ国の代表機関からの提案色を一つ一つ討議して、最後にインターカラーパレットを決定します。
これはもっとも早い時期の選定で、その後に発表される世界各国の色彩情報の参考になるように意図された 国際的なトレンドカラーというわけです。
では時期の流れごとに、もう少し詳しく説明していきますね!
時期ごとの流れ
・2年前
国際間で流行色を選定する世界で唯一の機関、インターカラー(国際流行色委員会)で会議が行われます。
毎年2回 各国の代表がパリに集まり、協議の上、ここで2年後に流行らせたいトレンドカラーの方向性が決まるのです。
日本からはJAFCA(日本流行色協会)が加盟しています。
その会議では特定の一色が決まるわけではなく、次世代に共感できるカラーの世界観や、素材の質感や配色のポイントなどが提案されます。
簡単に言うと、「ショッキングピンク」などといった固有名詞でなく、「柔らかいが グレー味を帯びた都会的な色合い」などといった色のイメージですね。
これを「選定色」と呼び、選定色を選ぶ作業は、加盟各国の代表の色彩情報団体が予め選んだ色を提案するところから始まります。
協議で決定した選定色は、世界で最も早いファッションカラー情報「インターカラー パレット」として発表されます。
・1年半前~1年前
海外では、インターカラー会議のあと、各国でトレンドカラーとデザインの方向性を決めます。
決め方はそれぞれの国で違いますが、パリの「プルミエール ヴィジョン(Premiere Vision)」という国際的に大きな素材展は大きな影響を与えています。
毎年2月と9月に開催され、当該シーズンを特徴づける色彩傾向をまとめたカラーパレットも発行しています。
日本では、JAFCAは実シーズンの1年半前になると、インターカラー会議情報を受けて国内向けトレンドカラーを選定し、JAFCA会員に発表します。
実市場の動向と消費者のファッション志向を分析した上で、色彩計画に必要とされる主要色を選び、更に素材を考慮に入れたおよそ20〜30色のカラーパレットです。
またカラーのまとまりごとに、色をイメージするテーマ名も発表されます。
それらは「JAFCAファッションカラー」と呼ばれています。
・1年前~半年前
国内の合繊・紡績メーカーはJAFCAファッションカラーを元に、日本のマーケットを意識してそれぞれの会社でカラーサンプルを作ります。
また ファッションカラーを軌道修正し、小売を意識して特に流行しそうな色を「アセンディングカラー」として提案します。
ここでようやく、色の方向性やイメージから、具体的な色名が頻出します。
・半年前~実シーズン
実際にアセンディングカラーを用いてアパレルメーカーが商品企画を行い、世界各地でコレクションやアパレル展示会が開かれます。
マスコミも消費者に向けて、これらのファッション情報や作品の写真や動画などを伝えます。
また、一般向けの雑誌にも流行色の話を取り上げます。
そして実シーズンになると、流行色を取り入れた商品がやっと店頭に並ぶのです。
似た傾向の色や素材、配色などが流行する仕組みは理解してもらえましたか?
メディアによりトレンドが大々的に取り上げられ、私たちはトレンドを楽しむことが出来ているというわけです。
(参考)
・インターカラー(国際流行色委員会)http://www.intercolor.nu/
・JAFCA(日本流行色協会)http://www.jafca.org/
なぜそんなに早いの?
なぜ、トレンドカラーは2年も前から決められているのでしょうか。
それはやはり、服が私たちの手元に届くまでにたくさんの過程を経ることに大きく関係しています。
川上(服の材料をつくる)・川中(服をつくる)・川下(服を売る)といった多くのプロセスが必要で、服が高い理由もこれと関係しています。
そのため、かなり前からトレンドを決めて実シーズンに向けて着実に動き出していかなければ間に合いません。
ファッション業界の人達が2年もの歳月を費やして完成させた服がやっと店頭に並び、私たちはそのトレンドを楽しむことができるのです。
なんのために決めているの?
ファッションビジネスにおいては、商品の心理的サイクルが短いため、色彩にも新規性を持たせることが重要です。
また「色」は、服を含め 全ての商品に密接に関わる要素であり、売り上げを大きく左右します。
政治経済等の時代の流れによっても、好まれる色・売れる色の傾向があります。
上記でも説明した通り、商品が出来上がるまでには多くのプロセスが必要です。
売れることを見込んで大量生産しても、予想が外れれば在庫の山になってしまい多くの損失が生まれます。
そのような悲劇を避けるためにも、様々なデータを元にしてトレンドカラーをあらかじめ分析・予測するのです。
ただし、このように2年も前に決められるトレンドカラーですが、必ず流行するわけではありません。
その年によって 予測通りに流行る場合もあれば、予測が外れて全く消費者側に浸透せず流行らないまま終わる場合もあります。
また、トレンドカラーを先取りして商品化しても実際には売り上げに繋がらなかったりと、何でも早く市場に出せば売れるということではありません。
ファッションのプロたちが発信するトレンドカラーは、あくまでも実シーズンに流行らせたい色や、流行るであろうと予測した色です。
それを受けて、実際に消費者がどう反応するかは未知数です。
その時の流行のカギは、ファッション業界ではなく消費者が握っているといっても過言ではないでしょう。
現在は価値観もライフスタイルも多様化の時代で、それはファッションに関しても通じています。
流行を取り入れるも取り入れないも、より自由な選択肢がある時代が来ていると私は感じます。
まとめ
今回は、流行色はどうやって決まるのか、トレンドカラーの決め方のプロセスについてご紹介しました。
もう一度簡単におさらいしますね。
・2年前: 世界会議でトレンドカラーの方向性を発表
・1年半前: 日本でトレンドカラーが決定
・1年前: 各地で生地・素材の展示会の開催
・半年前: アパレルブランドが商品製作をし各地でコレクション発表
・実シーズン: 実際に店頭に商品が並ぶ
流行の流れは本当に速く、新しいトレンドが出ては古いトレンドが消えて行きます。
マスコミやデザイナー、メーカー等、ビジネス業界のプロ達が一丸となってトレンドカラーを流行らせるよう仕向けていくわけなのです。
ただし業界が決めたトレンドカラーの商品でも、それを実際に買うかどうかの選択をするのは、消費者次第です。
なんだかんだ言っても流行色は、その時代の流れや雰囲気を表すことだけは間違いありません。
それらの色を上手に取り入れて、自分らしいファッションやライフスタイルを、より楽しんでみてくださいね。^^
また、自分のことを話すと 私は仕事で色彩を扱う仕事をしています。
今日紹介したように、トレンドカラーの情報も常に必要な業種です。
私の場合は、これらの色彩情報を参考にしながらも、自らの創造性を加味する視点を忘れてはいけないことを、今後も意識してやっていこうと思います。
では股\(^o^)/